伸び悩むアクセス数やフォロワー数に、苦しむ必要はありません

Webサイトや動画、SNS、オンラインゲームなど、あらゆるコンテンツで日々目にするネット広告。
デジタルマーケティングに取り組んでいる企業の多くが、商品・サービスをアピールするための重要な選択肢の一つとしているのではないかと思います。

こうしたネット広告を採用しようとする企業の方にその理由を聞くと、
「多くの人に自社の商品(サービス)を見てもらいたいから」
という答えが返ってきます。

確かに、インターネットに繋がるあらゆるデバイスで情報を発信できるネット広告は、「量」の視点からすると、ほかの広告媒体に比べて圧倒的な強みを持っています。

一方で、その「量」を獲得できずに悩んでいるデジタルマーケティングの事例もあります。たとえば次のようなパターンでしようか。

公式SNSを始めたものの、フォロワー数が少なく、どうすれば増やせるのかわからない。自社サイトのアクセス数も伸びずで、なんとか数字を増やしたい……。

これもネット広告同様、「量」を増やすことで、認知度や売り上げの向上につなげたいという狙いがあります。

こんなとき私は、
「フォロワー数やアクセス数が少ないことを、今の段階で過度に問題にする必要はないです。情報をより多くの人に見てもらうことではなく、まずは少数でも見てくれた人の心にちゃんと届くメッセージ、オファー内容に改善していきましょうね」
とお話しするようにしています。

ちょっと別の言い方をすると、
「100人に向けた内容の薄いラブレターを書くのではなく、たった一人の相手でよいから、必ず心を動かしてくれるようなラブレターを書きましょう」
ということなのです。

要は、情報の「量」よりも「質」を重視するというもの。

なぜなら「量」だけに依存したマーケティング、実はもう厳しい時代を迎えているからです。

私たち現代人が1日で受け取る情報の量、どのくらいだと思いますか?

なんと平安時代の人の一生分、江戸時代の1年分とも言われているそうです。

またケンブリッジ大学のBarbara Sahakian教授の研究によると、人は1日に最大で35000回もの決断を無意識のうちにしているとのこと。

インターネットの普及により、私たちは次々と高速で押し寄せてくる膨大な情報を、瞬時に「いる/いらない」や「自分には関係ない」と判断しているわけです。

これは実際に日頃の自身の行動を振り返ってみると、より実感できるかもしれません。

たとえばTikTokやInstagram、twitter、YouTube、ニューストサイトなどをチェックしているとき、画面をスクロールをさせながら気になるコンテンツだけを選んでいませんか?

さらには、コンテンツのあちこちで見かける広告も、興味がなければ出た瞬間に迷わず「スキップ」したり「閉じる」を選択したりしていませんか? 

このように、多くの人が脳を酷使している状態で「量」による効果を狙った情報を発信しても、一瞬で「いらない/自分には関係ない」とスルーされてしまうだけなのです。

インターネットが普及する以前だったら、受け取る情報量も限られていたので、手抜きのラブレターでも読んでもらえたかもしれないし、なんとなくその流れで「もしかしたら興味が湧いてくるかも。ちょっと連絡してみようかな……」と、対応してくれたかもしれません。

でも今はもう、それは難しい。
膨大な情報の一つひとつを吟味している時間、が私たちにはありません。

だからこそ、高速で流れていく情報の中で「おっっ!?」と立ち止まってもらえるような、「自分に関係がある。」と思ってもらえるような情報の「質」が重要なのです。

ではどうすれば、届けたい人に確実に興味を抱いてもらえるような「質」の高いメッセージを発信できるのでしょうか。
そこで必要になるのが、ペルソナの設定や顧客ニーズの明確化、緊急性の高い課題のあぶり出しなどです。

私がセミナーや本、コラムなどで「デジタルマーケティングは、どのような手段(ツール)を使うかよりも、その前のフェーズであるマインドセットを明確にすることが重要です」とお伝えしているのは、この土台づくりが結果的に情報発信の「質」を高めることにつながるからです。

余談ですが、ネット広告の中で事実や内容とはかけ離れた煽情的なタイトルや画像が蔓延してしまっているのは、こうした「とにかく興味・関心を引く」という意図が影響していると思います。

あれらは見る側が強制的に目を止めるよう、アテンション性を高めたものです。ネットリテラシーが身に付いているユーザーからすれば不快でしかなく、企業のブランドイメージにまで悪影響をおよぼすため、マーケティング的にはおすすめしません。

話を戻しますが、情報の「質」を高めるには、社会における価値観の変化にも合わせていくことが求められます。

ビジネスシーンにおいて「モノ消費からコト消費へ」というワードはすっかり定着していますが、西洋占星術では、2020年を境に「地の時代」から「風の時代」へと移行しているそうです。

私は占星術に詳しいわけではありませんが、この比喩が長年のコンサルティング業務で得た自身の実感値と大変フィットしており、かつイメージが伝わりやすいので、あえて紹介させていただきます。

各キーワードの受け取り方は人それぞれという前提に立ちつつ、マーケティングに当てはめるならば、シェアリングエコノミーという形態はまさに「所有から共有」です。

かつては車や車庫・庭付きの戸建てを所有することがステータスの一つでもありましたが、今ではカーシェアやシェアハウス、シェアオフィスというサービスが登場し、その価値観に大きな変化が起きています。

若い人たちの中には、車や家などの物質的な資産を所有することに興味がないという方も少なくありません。若者のコミュニケーションツールであるSNSも、情報や知識、体験、感情を他者と共有することによって成り立っています。

また「組織から個」というワードにも注目してみましょう。

多様性や個の尊重は世界規模での変容であり、当然マーケティングの世界にもつながってきます。これまでは企業や組織が社会の主役だったのが、そこで働く「個」にスポットを当てていくという流れが、グローバル企業でも起きています。

たとえばJALは、SNSの公式アカウントに現役の機長やキャビンアテンダント、整備士などが登場し、フライト先の土地の魅力やスポットを紹介しています。
みなさん楽しそうで、一気に親しみが湧いてきます。

まずは「個」を好きになってもらうことで、その先にあるJALという「組織」も好きになっていくのではないかと思います。

昔は人気アーティストがCMソングを歌い、「JALで行く〇〇」といったコピーがスタンダードでした。もちろんこうしたアプローチも残っているとは思いますが、JALほどの大企業が、あえて「個」を大切にした情報発信も行っているのがわかりますね。

「うちは中小企業だから、大手のやり方は関係ない」
なんて思わないでください。

マーケティングに年間で億単位の予算を費やし、最先端の情報や潮流を掴んでいる大企業が「個」を売り出しているということは、もはや見過ごせない事実なんです。

組織と出会って個とつながるのではなく、個と出会って組織とつながる――。

時代の流れに乗るには、まずその流れを受け入れていくことから始めていくと良いと思うのです。

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